

その日は特に予定もなく、家でのんびりと過ごしていた。
掃除を終え、ソファに腰を下ろしてスマホをいじりながらリラックス。
ゆったりしたTシャツにショートパンツ。
誰に会うわけでもないから、ブラジャーもつけていなかった。
自分の家でくつろぐときは、いつもそうだ。
そんなとき――ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
「え、誰だろう?」
モニターを見ると、そこには宅配便の配達員さんの姿。
慌てて立ち上がり、玄関へ向かった。
だけど、玄関に姿を映した瞬間、心臓がドキッとした。
――そうだ、私、ノーブラのままだった。
一瞬、部屋に戻って羽織を取ってこようかとも考えた。
でも、ドアの向こうでは配達員さんが待っている。
変に遅れると気を遣わせてしまう気がして、結局そのままドアを開けた。
「お荷物でーす」
笑顔で差し出された伝票にサインをしながら、ふと視線を感じた。
胸元にふわりとかかるTシャツ。
下着をつけていないことを、きっと男性なら一瞬で気づいてしまう。
「え、見られてる…?」
心の中でそう思った途端、頬が熱くなる。
もちろん相手は仕事だから、何も言わないし、すぐに荷物を渡してくれた。
でも、その短い時間に感じた視線は、確かに私をざわつかせた。
ドアを閉めたあとも、鼓動が早いまま収まらなかった。
ただ宅配便を受け取っただけ。
ほんの数十秒の出来事。
でも、Tシャツ越しに伝わる自分の“無防備さ”を意識した瞬間、
まるで秘密を知られてしまったような気持ちになった。
「あの人、どう思っただろう」
「気づかないふりをしてくれてたのかな」
考えれば考えるほど、頬が赤くなっていく。
段ボールを開けながらも、さっきの出来事が頭をぐるぐると回っていた。
ただの宅配便なのに、心臓がこんなに高鳴るなんて。
「次はちゃんと羽織を用意してから出なきゃ」
そう思いながらも――どこかで少しだけ、あのドキドキを楽しんでいる自分がいた。
無防備な瞬間を他人に気づかれてしまったかもしれない、という羞恥心。
そして、ほんの少しだけ芽生えた妙な高揚感。
昼下がりの静かな時間が、思いがけずスパイスの効いた出来事に変わった。