

その日は珍しく予定のない休日だった。
朝から掃除や洗濯を片付け、昼食を済ませたあとはソファにごろんと横になる。
格好はゆったりしたTシャツにショートパンツ。
下着もつけていなかった。
家の中で過ごすだけだと思っていたから、わざわざ整える必要もないと思ったのだ。
窓から入る風が心地よくて、ついウトウトしていたとき――ピンポーンとチャイムが鳴った。
「え…誰?」
立ち上がってインターホンを見ると、「宅配便です」という男性の声。
注文していた荷物が届いたらしい。
普段ならすぐに羽織を取ってから出るところだけど、今日は油断していた。
部屋着のまま、しかもノーブラ。
「このままでも…大丈夫、だよね」
自分に言い聞かせるように玄関のドアを開けた。
ドアの前にはスーツ姿の配達員。
淡々と「お届け物です」と言いながら、伝票を差し出してきた。
サインをするために端末を受け取ったその瞬間――視線を感じた。
顔でもなく、足元でもなく。
胸元に、確かに注がれていた。
(やだ…見られてる?)
Tシャツ一枚、薄い布越しに形が浮き出してしまっていたのだろう。
気づいた瞬間、体がカーッと熱を帯びた。
彼はすぐに視線を逸らし、何事もなかったように対応してくれた。
けれど私には、たった数秒が永遠のように長く感じられた。
ドアを閉め、荷物を床に置いたとき、心臓がまだドクドクと早鐘を打っていた。
「ただ受け取っただけなのに…どうしてこんなに」
胸のあたりを両手で押さえる。
そこには、さっきの視線がまだ残っているような感覚があった。
羞恥で顔が赤くなる。
でも――同時に別の感情も湧き上がっていた。
(もし、あの人が手を伸ばしてきたら…?)
想像した瞬間、さらに体が熱くなる。
自分でも驚いた。
見られた恥ずかしさが、なぜか“触れてほしい”という衝動に変わってしまっていた。
「だめ、考えちゃいけない…」
そう思えば思うほど、妄想は止められない。
もちろん、現実には何も起きていない。
ただ宅配便を受け取っただけ。
彼は礼儀正しく去っていき、私は荷物を抱えて家に戻った。
けれど――心の中では、違っていた。
「もし彼がもう一歩踏み込んでいたら」
「もし胸に触れられていたら」
そんな“もしも”を想像してしまい、ますます火照りは収まらなかった。
誰にも言えない。
こんな気持ちを抱いているなんて知られたら、恥ずかしくて穴があったら入りたい。
でも、秘密の妄想は私の中で甘い熱を残し続けていた。
あの日の午後の出来事を思い出すたびに、胸の奥がざわめき、体はまた熱くなるのだ。