

その日、私はいつもより遅い時間にジムへ行った。
仕事で遅くなったせいで、トレーニングを終えたのは閉館30分前。
フロアには数人しか残っておらず、空気はしんと静まり返っていた。
汗をかいた身体をタオルで拭いながら、ロッカールームへ向かう。
シャワーを浴びるか迷っていたそのとき、後ろから声をかけられた。
「お疲れさまです。今日も頑張ってましたね」
振り向くと、ジムのトレーナー──彼が立っていた。
数ヶ月前から時々話すようになり、軽く冗談を言い合う仲にはなっていたけれど、プライベートな関係ではなかった。
でも、その日は違った。
彼の目が、どこかじっと私を見ている気がして、喉がひりついた。
「今日は空いてますね」
「ですね。閉館ギリギリなので。……あ、タオル貸しましょうか?」
彼が差し出してきた新しいタオルを受け取ると、ふと、指先が触れ合った。
ほんの一瞬。
でも、その一瞬で、身体の奥がピクリと震えた。
タオルを手にしたまま、彼は言った。
「……ちょっとだけ、手伝ってもいいですか? ストレッチとか」
「え……今、ですか?」
「誰もいないから。静かな方が、集中できるでしょ」
その目が、まっすぐ私を見ていた。
もう、断れる状態じゃなかった。
ロッカールームの奥、マットスペースで二人きり。
私はストレッチの姿勢を取って、彼の指示に従って身体を倒していく。
「ここ、固くなってますね。ちょっと押しますね」
背中に触れた彼の手が、タオル越しにじんわりと熱を伝えてくる。
タオルの上からなのに、肌に直接触れられているような錯覚に陥る。
「……んっ」
声を飲み込む。
でも、息が乱れていくのを止められない。
腰に回された腕。
ふとももにかかる重み。
「……ちょっと、近すぎじゃないですか?」
冗談めかしてそう言った私に、彼は小さく笑ってささやいた。
「逃げないでくださいね。感じてるの、バレてますよ」
その瞬間、心臓が跳ねた。
そして次の瞬間、背後からそっと倒され、マットに仰向けになる。
タオルが胸の上でふわりとめくれ、彼の手がそのまま胸のラインをなぞった。
「……ダメ、ここジム……っ」
「誰もいませんよ。……声、我慢できますか?」
その声だけで、膣がきゅうっと締まったのがわかった。
反応してしまう自分が、どうしようもなく恥ずかしかった。
でも、それ以上に──求めていた。
キスは、突然だった。
でも、激しくはなかった。
触れるか触れないかの柔らかい唇が、私の唇を何度もなぞって、焦らすように舌を差し込んでくる。
「ん……っ」
舌と舌が絡む音が、静かなロッカールームに微かに響く。
タオルの下に滑り込んできた彼の手が、スポーツブラの中に触れたとき、背中が反射的に弓なりになる。
汗ばんだ肌に指先が滑るたび、性感が解放されていく。
「濡れてますね……こんなに」
彼が指先を下腹部に滑らせ、スパッツの中に手を入れたとき、私は思わず太ももを閉じそうになった。
「恥ずかしい……こんなとこで……っ」
「……俺のせいですか?」
「……ちが……う、けど……」
何を言ってるのかわからなくなる。
彼の指が、ゆっくり、でも確実に私の濡れた部分を撫でてくる。
「気持ちいいところ、教えてください」
そんなの、言えるわけがない。
でも、指がそこに触れた瞬間、声が漏れてしまった。
「……っ、そこ……だめ、イっちゃ……っ」
息を殺しながらも、腰が逃げられない。
むしろ、求めるように自分から押し付けてしまっていた。
彼は、私のタイツとショーツを一気に膝まで下ろした。
そして、そのまま濡れた中心に唇を落とした。
「や……だめ、舐めちゃ……」
でも、止まらなかった。
彼の舌が、執拗に、柔らかく、でも確実に私の奥を舐めてくる。
「んっ……あっ、や……あっ……!」
声を殺そうとするのに、首を仰け反らせるたび、シーツのようなマットが背中に擦れる。
そして、彼が囁いた。
「入れてもいいですか?」
私は何も言えなかった。
でも、頷いた。
身体が勝手に──欲しがっていたから。
彼のモノが入ってくる瞬間、濡れきった奥がぎゅうっと締まるのがわかった。
「……きつい、奥まで届いてる……」
「んっ……だめ、ゆっくり……っ」
腰を打ちつけられるたび、マットがきしむ音が恥ずかしい。
でも、快感がそれを上回ってくる。
汗ばんだ身体同士がぶつかり合って、ベタベタと熱が絡む。
彼の手が、胸、腰、太ももを乱暴に撫でながら、奥まで貫いてくる。
「あっ……もう、だめ……イっちゃ……っ、あっ、あっ……!」
最後の瞬間、全身がビクビクと痙攣して、私は静かに果てた。
静かなロッカールームに、私の荒い呼吸だけが響いていた。
彼は優しくタオルを取って、私の身体を拭ってくれた。
「……すみません、止まらなくて」
「……私も。止めなかったから」
もう“関係ない人”には戻れない。
汗と吐息と、濡れた奥の余韻が、ずっと身体に残っていた。
そして私は知ってしまった。
見られるだけじゃない、触れられて、乱されて、求められて──
私は、もっともっと“女”になれる。
あの夜のロッカーは、ただのジムの一角じゃない。
私が“本当の自分”に戻った場所だった。